大阪から島根行こうと思ったら電車消えた①

 

「旅が好きで、いろんなところに行ってきた。北海道から沖縄まで。自転車に乗って、電車に乗り、クルマを走らせ、バイクにまたがり、歩き、船に揺られて…。今回、沖縄に1週間滞在して、いまは電車で島根に向かっている。

 

ひとつ、断言できることがある。放浪に飽きた。なぜか?これも理由は単純だ。

 

『理由が欲しい』

 

たしかに、楽しいと思う瞬間もある。綺麗な景色もある。でも、そこには移動の理由がない。初めての遠出は確か小学5年生のときで、自転車で大阪から八幡市まで行ったのが最初だった。自分の世界が延長される感じがたまらなく快感だった。そこから、部活の仲間がラウンドワンに行っているあいだ、」

 

ここまで、福知山までの電車の中で書いていた文章。

 

島根に住む友達に会いに、山陰本線を通って松江までいくはずだった。あ〜なんだか普通に着くなあ、なんだかルーティンっぽいなあ、つまんねえなあ、そう思いながら文章を書いていて、一旦休憩するか〜と思っていたら駅に着いて、ある掲示板が目に飛び込んできた。

 

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ん?

 

「大雨 終日運転取り止め」

 

まあ、俺とは関係ない路線やろ。どこか別の路線が止まってるのだろうなと信じつつ、一応区間を確認してみる。

 

山陰本線:浜坂駅から東浜駅

 

めちゃくちゃ関係あるやんけ。モロ被りや。

 

要約すると、島根にはこのままだと行けない。

 

「普通の旅、つまんね〜」とか書いたら電車が運休になっていることに気がつく。人生はよくできている。しかし、これはマズイ。昨日は色々あって知り合いを夜中に関空から市内に送ったりしたものだから、とにかく眠い。元気がない。元気がないけど、電車は運休。先に行けない。

 

うーん困った。一旦情報整理だ。

 

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浜坂より先が運休している、とのこと。矢印より左側が一切動かない。しかも、浜坂駅兵庫県。目的地は島根なのに、鳥取に入ることさえ許されない状況。

 

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また、こういう災害での不通は長期に渡る場合もあり、たしか北海道の日高本線も台風で一部区間が不通になり、そのまま廃止となった。

 

つまり、いつ復旧するかわからず、下手すると長期間動かないということもありえる。この時点で金曜の昼過ぎだが、宿は予約してしまったので、土曜夕方には松江に着きたい。

 

ここでの案はいくつかある。

 

①カネでシバく

 

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画像にあるように、また大阪まで引き返し、西に進んで北上して島根に入るというルート。つまり、山陽側を迂回するわけだが、こちとら山陰を通るきっぷを買ったばかりだし、なにしろ無職なのでこんなことにカネなどかけていられない。却下。

 

②バスでいく

 

まあ、バスなら出てるだろうと思ってGoogleマップのバスルートを調べるが、出ない。

 

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なんと山陰本線をバスのみで進むのは不可能であることが判明!うーむこれが車社会。高速バスも無い。一旦保留。

 

ジモティーでチャリを貰って気合いで漕ぐ。

 

浜坂から倉吉までが止まっているので、その70キロをチャリで漕ぐ。今から漕げば、なんとか間に合うだろう。さっそくジモティーで検索。

 

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去年の11月に10万円のチャリが売れて以来一切投稿がない。

 

論外。

 

③ライドシェアアプリを使う

 

「notteco」という、ヒッチハイクマッチングアプリで検索をかけてみる。「兵庫」から「島根」っと…

 

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無い。却下。

 

ヒッチハイク

 

じゃあヒッチハイクかあ、となる。何度かやったことあるけど、他人の善意に頼り切りなところがあってあんまりやりたさが起きない。それに、浜坂で島根方面へ行くクルマが見つかるかわからない。下道ヒッチやったことあるけど、平気で5時間とか待った。タイムリミットもあるし、何より元気もないから選択肢に入らないかなあ。保留。

 

 

ゴチャゴチャバスを探してみるけど、コミュニティバスはあまり本数もないし、バス停の間8キロを歩いたりする必要も出てくる。

 

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10数キロを3日かけて移動する意味不明なルートを案内されたりもする

 

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うーむ


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結論が出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

歩けばよくね?

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もうめんどくせえ。歩くのカネかかんないし、乗り換えとか待つ必要もない。他力本願でもない。これしかない!

 

さて、電車は豊岡に入り、乗り換えのため90分待つことに。電車が止まってしまう浜坂駅周辺には飲食店やスーパーがないので、ここ豊岡でカロリー補給を行い、そして徒歩中の食料を調達する必要がある。

 

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できるだけ体力を消耗しないように、ゆっくり、小幅で歩く。歩くという行為の節約。

 

さて、まず何よりカロリーが必要だ。できるだけ安く、かつ高カロリーなものを食う必要がある。

 

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目に止まったのはこのお店。50円で大盛りにできるのがよい。やはりここは高カロリーなカツ系を食うべきだが、迷いが生じる。

 

カツ丼は800円で、50円プラスすると大盛りにできる。対してとんかつ定食は900円で、ご飯大盛りは無料。

 

850円の大盛りカツ丼と、900円の大盛りとんかつ定食。どちらの方がカロリーが高く、コストパフォーマンスに優れているのだろうか?どっちもカツの枚数は変わらないのかな?いや、なぜカツ丼の方が安くなっているのだろうか。カツの枚数が少ないからでは…?だから安い?いや、オペレーションコストが低いから、つまり丼に乗っけるだけだから安いのかもしれない。となるとカツの枚数は同じなので、カツ丼を頼む方が安牌になる。しかしまてよ、カツ丼を目玉メニューにするために少し安くしている?てか、そもそもどんぶりの大盛りは50円プラスでなぜ定食は無料で盛れるのだろうか?

 

もしかすると、カツ丼の大盛りはカツも少し盛られる…?なんせ定食は「ライス大盛り無料」とある。しかしカツ丼には「ライス」が盛られるとは記載がないし、なにせ50円多くかかるのだ。これにはきっとウラが…。おれは1キロカロリーでも多く摂取せねばならん。早く結論を。店員さんに「どっちがカツ多いですか?」って聞く?いやそれはなんかな…てかまてよカツ丼には卵がある、この卵があるということがめちゃくちゃ重要なのでは…

 

などと、延々と逡巡していたのだが、ふとアホくさくなり普通に食いたかったカツ丼大盛りをオーダー。

 

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うまい!だがまだハラが減るのでスーパーへ。多くのカロリーを摂取するにはどうすればいいか?と、似たような思考をスーパーをグルグル歩き回りながら巡らせ、「菓子パンはしんどいのでやめる」「ウイダー系も腹が膨れない」「餅、腹持ちよくね?」などと結論を出し、ゆっくり小刻みに歩いてレジまで向かい購入したのがこちら。

 

・バナナ

・みたらし団子 

 

バナナはすごい。栄養価のバランスもよさそうだし、疲労回復にも良い。そしてなにより多分、飽きない。高校2年のとき、ママチャリで大阪から東京まで行こうとしたときにカロリーメイトを10箱買ってそれだけを食料にしたことがあったのだが、道中で狂いそうになった。名古屋で挫折したのはカロリーメイトの食い過ぎも原因だった気がする。

 

そして、揚げ物主体の弁当も無理やりブチ込むことにした。身体には悪いが、何よりもカロリーが必要なのだ。

 

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やや吐きそうになりながら弁当を掻き込み、電車の終着点である浜坂駅へ。いやーここから徒歩か…しかも小雨だしな…と思っていると、俺と同じようにリュックを背負い、あたりをキョロキョロ見回す外国人の姿が。もしや…と思い声をかけてみると、彼も同じく途方に暮れてるらしい!どこまで行くか聞くとなんと同じく島根とのこと!

「お前はどうやっていくのか?」と聞かれたので「歩く!」と答えると、彼は笑って一緒に行く!と言ってくれた。

 

やはり仲間は心強い!雨の降る中、暗い山陰の道を歩きはじめたのだった。

 

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(つづく)

那覇② - 沖縄市、コザ

前回

:https://kirimanjyaro7.net/entry/2023/07/09/011646

 

3日目。那覇から北上して、沖縄市へ向かう。

 

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バスに乗って沖縄市へ。目的はライブ。この世で一番好きなアーティスト。バスから降りると、早速よさげな定食屋が。「ゴーヤチャンプルー定食」など、沖縄料理がたくさんあったが、逆張り精神が発動して「へちま味噌煮定食」をオーダー。

ちょろっとヘチマ入ってるくらいかと思ったら、恐らく丸々一本分の大量のヘチマで埋め尽くされていた。てかヘチマ、意外と食ったことないし、うまい。昨日は脂まみれだったから、ハラの調子が良くなった。気がする。

 

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あとはぶらぶらコザを歩く。雰囲気が落ち着いていて結構好きかも。ただ、なんというか、ヨソモノが表面だけ掬って消費してはいけない感じというか、堆積したものを感じる。

 

テーブル席がゲーム筐体になっている喫茶店でタコスを注文。すると、「キープの方が来られたのでお席移動願えますか?」と言われ、移動。俺が座っていた席でおっちゃんがずっとピコピコ花札を始めていた。「キープ」はよくわからんけど、バリバリ稼働しているゲーセンと喫茶店が合体した感じで、非常に良い。

 

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そして、この旅唯一のビジホ。建物全体が重厚かつ贅沢なデザインが施されていて、非常に良かった。ビジホ、というよりひと昔前の、ちょっとしたリッチなホテル、という佇まい。

 

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ミュージックタウン音市場。思い出は俺だけのものにしたいので、ノーコメント。わはは

 

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帰り、通りを歩く。度肝を抜かれる。どこまで行っても、アメリカ。米軍人向けの店が並んでいるらしい。看板は英語ばかり、客もほとんどが外国人。ネオン。爆音の音楽。暗い店内。そんな店が、何軒も何軒も並ぶ。たまげた。こんな風景が日本で広がっているのか。喫茶店で読んでいた現代沖縄史の内容を思い出す。この風景をどう受け止めていいのか、わからない。「ディープスポット」。そんな受け取り方は違うとも思う。そもそも、歴史の堆積を「ディープ」とまとめてしまう物言い自体、あまり好きではない。

歩いて行くと、急にネオンが途切れ、闇が深くなる。公園。幹線道路。歩くと、マクドナルドのサイン。ふらり、中に入る。人はあまりいない。ドライブスルーが主体だからなのかな?でも、店内はかなり広くて、テーブル席がひしめきあっている。関西でここまでの規模の店舗は見たことがない。気がする。

ここのマクドはひと味違っていたりするのだろうか、なんてことを考えていたが、至って普通。普通にテリヤキ。それはそうか。だだっ広いテーブルのなか、ひとりハンバーガーをむさぼる。

コザ。昼間はあまり人通りがない。那覇とは全く異質の空気。ネオン。少し寂しい雰囲気。商店街を歩くと、日本人ばかりがいる居酒屋があった。棲み分け、のようなものなのだろうか。たとえば棲み分けのようなものがあるとして、みなどういった感覚で過ごしているのだろう。特に気にせず、ほとんど無意識に行なっているのだろうか。そこら中に音楽が溢れ、ビートが刻まれる街。でも、そのビートに素直にノッていいのか、わからない。コザについて調べる。「コザは米軍人が多く、ライブハウスでも不満があるとゴミを投げつけられていたから、本場の本物のロックが育った!コザは音楽の街だ!」そう解説する記事。首を傾げる。本場のロックが育った。手放しで褒められるのだろうか。ゴミを投げつけられるような厳しい環境で"鍛えられた"。そうなのか。それは、鍛えられた、ということなのか。

 

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この街のことを一体どうやって理解すればいいのか、わからなくなった。ハンバーガーを食べおえ、そそくさと店を出る。ファミリーマートオリオンビールを買う。プレミアムって付いてるやつ。どうせならね。蒸し暑くて、ダラダラと汗が出る通りを歩きながらビールを飲む。全部がダラダラと。車はひっきりなしに通って。

 

ホテルの机。せっかくある机。何かやるか、と思ってメモにやりたいことを書き殴る。閉塞感。

 

どうやって生きていけばいいのだろう?漠然とやりたいことはあるが、どう具体化すればいいのだろう?自分をバラす。そのつもりで、店を閉めたあとは過ごすつもりだった。色んなところに行きまくって、発散させまくって、徹底的にバラバラになる。バラしたあとで、また組み立てる。魂の洗濯。

 

そのつもりだったけれど、ずっと凝り固まる。ゴリゴリ。延長。そう、ここは京都の延長。心はそう容易く切り替わらないのだ。

 

ふかふかで、広くて、寝心地がいいはずのベッド。広さを持て余しながら、感情もどこにやればいいのか迷いながら、眠りについた。 

 

(つづく)

那覇①

無になって。

 

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実家に着く。前日から全然寝ていない。バカみたいに思い荷物を下ろす。

 

母親が呆れている。ボストンバッグに、スキー用の大型リュック、そして小さいリュック。本当に重かった。中には店に貼っていた張り紙が。紙だけで、この重さだ。

 

さらにはギターと店の看板もあったのだが、さすがに実家へは持って帰れないので、京都の先輩の家に置かせてもらった。とてもありがたいし、こんなに甘えて申し訳ない気持ちでいっぱいになる。先輩の部屋。学生時代に何度も訪れ。「デカいことをしよう!」そう何度も、言い合った場所。安堵の気持ちと、虚脱感。感情と脳内はぐちゃぐちゃで、そこに疲労感が覆い被さる。眠い。けど、この大量ものを運んで、しかも8時間後には関空から旅立つ。動かねば。

恐縮ながらゴミやら看板、ギターを置かせてもらい、飲食店営業許可書の返却のため烏丸御池へと向かう。身体はヘトヘトだ。バスは全然来ない。荷物も持ってもらってしまった。なぜかいつもの7割増しくらいで申し訳なくなってしまって、ずっと謝っていた気がする。多分色々と迷惑をかけた。すみません。

アホみたいに重い荷物を引きずって、御池のビルの6階にいく。淡々とこなされる事務作業。紙切れ1枚に名前と住所、店の情報を書いて手続きはおわり。これで正式に閉店だ。あっけない。目の前の職員の方は物語を引きずっていない。でも、おれは背負っている。物理的にも紙の重さが肩にのしかかる。

 

重い。

 

地下鉄に乗り、なんとか京阪へ。即、寝落ち。汗もダラダラ。そういえば、昨日の夕方18:30頃から、朝8時までずっと店にいた。

 

葬式のようだった。

 

ドタバタして。たまにしんみりして。盛り上がったり。静かになったり。ただ、時が過ぎるのを待って。形容しがたい時間。ほんとうに、言い表せないけど、葬式、というのがピッタリくる。何かが葬られるのを、皆で見届ける。見届ける、というより、居合わせてしまい見送らざるを得ない。そんな時間。ウトウト、さっきまでの時間が溶けていくみたいに、眠りに落ちた。

 

呆れ顔の母親を横目に、淡々と荷を解く。現実感がない。フワフワしている。モノが、理解できない。メシを食って、シャワーを浴びる。気持ちいい。ちょっと生き返ったみたいで。

 

目が覚めると、宅配の大きな段ボールが二つ届いていた。母親はまた呆れているが、それを横目に荷解きをする。親をあまりにも呆れさせてきたので、両親ともども呆れが板についてきたように思う。変なガキになってしまいすまんな。しかし、仕方がない。

 

そうこうしているうちに、そろそろ出発の時間だ。おびただしい数の荷物をほどいて。ひとまず整理して。でも、本当に整理などできるはずがない。

 

残りカスみたいな何かを背負って、外に出た。

 

那覇

 

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那覇空港に着いたけど、全然人がいない。あたりまえだけど、時刻は22:30になろうとしている。気候はかなりじっとりしている。湿度が高い。ひとまずゆいレールに向かって、歩く。沖縄にはJRや路面電車はない。モノレールに乗るが、暗くて何も見えない。この時間にチェックインできる気軽な宿はないので、快活クラブへ向かう。

 

駅を降りる。徒歩15分ほどで着く。途中で歯ブラシを買って。いやあ、京都で全部捨てちまったなあ、もったいないなあ、そう思っていたけど、まあこれも心機一転か、と思い直す。なんとなく、京都で使っていなかった歯磨き粉にしてみたり。

お腹が空いたので向かいのラーメン屋へ。ラーメン大。バカデカい。そしてうまい。店主は無愛想なオヤジ。やたらと腹が減っていたので、半チャーハンを頼む。しかし、出てきたのはデカいチャーハン。「ハン」「チャー」「ハン」って、商品名としてかなり欠陥がある、聞き取りにくさという点において、などとメンドイことをウダウダ考えていたが、これも「食え」という天からの思し召しだと思い、書き込む。が、キツイ。が、食った。ふう。

快活クラブ。完全個室で、寒い。服を洗い、シャワーを浴びる。やっとサッパリできた。こう、リラックスしていると閉店の感傷がいきなりブワッと溢れてきてしまい、号泣。たぶんすぐ寝た。

 

目覚め。寒くて身体が冷えて、ダルい。寝過ぎて、4100円も取られた。ビジホ行けるやんけぇ…!ワナワナと怒りに震え、ということではないが、また仕方ないかと割り切って外へ。またまた蒸し暑い。もう昼をとっくに過ぎていたのだが、何をするか迷う。

ふと、お客さんに座間味島という場所をおすすめされていたのを思い出し、いくことに。急いでフェリー乗り場に駆け込み、ギリギリでチケット購入。出航15分前だった。宿はないけど、キャンプ場にもギリギリで電話。なんとかテントも借りることができた。

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高速船は揺れまくって吐きそうだった。睡眠不足もあって、気絶。目が覚めたら入港していて、バスに乗り込む。グラサンをかけ麦わら帽を被ったおっちゃんが運転手。外見は怖いが物腰柔らかだ。バスからは観光客がたくさん降りてくる。しかも日本国外から来たようで、この島は観光地なのかな、と思う。バスはカッ飛ばし、ものの5分でキャンプ場へ到着。受付も感じのいい兄ちゃんだった。みんな、爽やかで感じがイイ。

 

ひとまずテントの設営を終える。高校のとき山岳部だったから、懐かしいし、楽しい。ゆっくり、説明書を読みながらテントを組み立てる。ツボを押していくみたいに。傷を癒すみたいに。ゆっくりと。

 

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海は穏やかで。横になる。日が暮れるまで。シュノーケリングをしていた人がいたけど、みんないなくなるまで。じっ。このとき何を考えていたのだろう。店のこと。波が打って、風が吹くたび、昨日の朝のことが、映画の一コマみたいに蘇る。ほんとになくなったのか。ザザー。感慨もなくなったり、いや、切り替えられそうだなと思った次の瞬間、フワッと蘇ったり。打って引いて。僕はずっと砂浜に横になっていた。

 

夜中、ガサゴソ音がした。カラスか?パン!テントをはたくが、音は消えない。ガサゴソガサゴソ。何かが蠢く。パン!消えない。なに?こわい、と思いつつスマホのライトで照らす。見えない………ん?

 

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ヤドカリがいたのだ。ヤドカリが、地面から出てきて、蠢いて、離れていった。なんだか恥ずかしくなった。たくましく生きろよ。そう言われているような。

 

蠢く

 

夜はあまり眠れず、汗はぐっしょり。ひとまず海に入ろう。

 

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とてつもなく綺麗だ。砂浜は白く、波打ち際は透き通って、遠くを見渡すと紺碧に染まる。入る。気持ちがいい。ああ〜。なんだかなあ〜。またいつものようにウダウダ考えようとしていると、ザバー!と、波に顔を叩かれた。ヤドカリに続いて、ウジウジすんなよ。そう言われているような気がした。たしかに。そう思って、波に身を任せた。気持ちがいい。何もかも洗われていくみたい。なんだか、切り替えられそう。そう思って、海から上って、シャワーを浴びて、木漏れ日の中をひとやすみ。

 

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ダメだ。まだしんみりとしてしまう。ずーっと、あまりにも綺麗すぎる海を眺めていた。しかし、人間気分が落ち込んでいるときに綺麗すぎるものを見つめてしまうと、そのコントラストで余計鬱屈としてくるものなのかもしれない。とりあえず動くかと思い、帰りのフェリーを取るために港までいった。1時間ちょっとくらい時間があるな。メシでも食おう。

 

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かじきマグロユッケ丼。美味しかった。腹ごしらえがてら散歩して、島内唯一のスーパーでスパムおにぎりとオリオンビールIPAを購入。暑い日差しがカンカンに照りつけるなか、こうして昼間からビールが飲めるのは最高だな。ゴクゴク。うめえ〜。

 

歩いていると、展望台の標識が。ここは登って眺めるしかないでしょ!

 

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あまりの絶景に言葉を失った。思わず消えてしまいたくなるような、美しさ。立ちくらみがした。受け止めきれない。いまの自分はこの景色を見るべきではない。冗談抜きで、直視できなくて、ときどき目を伏せてしまった。

綺麗な、海だった。あまりにも、青い。

 

本島に着いた。歩いて服屋に行き、服を買う。着替えをあまり持ってきていなかった。そして、とてつもなくハラが減り、肉をガブガブ食いたくなった。

 

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まさかのひとり焼肉きんぐ。那覇で取る食事のチョイスの中で一番あり得ない選択肢かもしれない。しかも6人掛け座敷席。でもどうでもいい。店員も訝しく思ったろうが(おそらく特に那覇ではひとりで焼肉に行く人間はあまりいないだろう)、俺はかまわずバクバク食った。食って食って食いまくった。ハラが喜ぶ。島にいたこともあり、実は昨日からあまりメシを食っていない。

充足感とほろよいと共に、隣にあったカラオケ館に入って、30分ほど歌う。いつもの自分なら絶対しないことを立て続けに行ってしまった。そうか。世のサラリーマンや学生はこうやって、たらふく食い、酒を飲み、歌い、色んなことを発散させるのか。歓楽街はこうやって存在してるのか!長年の疑問が無事解決されると同時に、一つの感情が心に残った。

あまり楽しくない。

いや、肉はうまいし歌うのも楽しい。消費は楽しい。けど、自分の人生はこれを求めてはいない。父親は昔からこう言っていた。「なぜサラリーマンは居酒屋に行くのか?それは大きい声で会話して酒を飲んで、ストレスを発散するためだ。」父は冗談めかすのでもなく、大真面目に言っていた。もちろん、俺だって友達と居酒屋に行くし、サークルでも飲み会はあった。でも、ストレスを発散させるためだけの酒飲みは嫌だと思った。消費と発散。俺はこれらを求めてはいない。

焼肉の脂と、自分の汗と、虚無感と、那覇の生ぬるい風と。全部を身に纏って、ゲストハウスに着いた。玄関に入ろうとすると、巨大なゴキブリがお出迎えしてくれた。デカい。しかし、なんだか嫌悪感はなかった。関西ではあんなに忌避していたのだが、南国だと絶対出るだろうという前提で望むので、忌避感が軽減されたのかもしれない。

 

宿のシャワーは謎に臭く、設備もボロボロで萎えたが、ベッドはすこぶる快適だった。ドミトリーなのに荷物置き場がきちんとあり、サイズもセミダブルはあって、なにより天井が高い!2段ベッドサイズを1人で使っている感じ。最高だ。口から脂の香りを漂わせながら、いつの間にか眠りについた。

 

(つづく)

デカい穴

ずるずると引きづられそうなので、これで一旦デカい穴への言及は終えたい

 

愛おしい青春の日々でした。あんなに煮詰まって、極限まで凝縮された日々はもう来ないだろう。今になって、めちゃくちゃ泣けてきた。昨日は徹夜で、徹掃除で、そのままアホみたいに重い荷物持って移動して事務手続き終えた。感慨が湧く暇もなく。

 

でまいまめちゃくちゃ寂しい。この2年の人生の全部だったのに。色んな人と過ごせた毎日だったけれど、これからはひとり。いま沖縄の快活クラブで泣いてる。

 

最終日。ひとりひとり、帰っていって。なんか、無理だった。寂しすぎる。特に開店当初から、ほぼ毎日来てくれてたひとたちが帰ったときマジで無理だった。キツすぎ。遠ざかっていく背中。もうしばらく会わんのだろうな。カウンターの中から、穏やかに流れる時間。適当なはなし。適当な会計。たまに起こる謎の盛り上がり。全てが愛おしくて。だめだ。涙が止まらない。いきなり実感が湧いてきた。しばらく京都には帰れない。濃すぎる。ずっと続くと本気で思ってた。もうカウンターの中からあの風景が見られないの無理すぎる。あの、凝縮された、煮詰まった時間は過ごせない。涙止まんない。マジで無理だ。

 

でも、京都を出て、色んなことをしたいのも事実だ。ユートピアを出るときはくるし、ずっと続くものはない。でも、あの、どろっとした、ときの流れが早いような止まったような、どうにもならない時間がたまらなく愛おしい。自分は何もできなくて、美味い酒が作れるわけでも、特別話がうまいわけでもないのに、いろんな人がねぎらってくれて、本当に嬉しい。生きていてよかったし、頭があがんない。だめだ。無理すぎる。もっとスマートにまとめてキリッとカッコつけたかったんだけど、マジで無理だ。

 

最高に愛おしい日々でした。人生でこれに匹敵する日々はもう来ないのだろうな。

 

ありがとう、デカい穴。 

 

ありがとう、来てくれた全ての人たち。

 

そしてまたどこかで!

捨てる

大量のものを捨てた。店を閉じるからだ。

 

コップ、いつか使うと思っていたレモン絞り、未開封のコーヒー豆、謎の電子機器、大量の洗剤、大量のスポンジ、捨てていいか迷う書類…

 

全部捨てた。迷わず。迷っていられないから。2日後の朝9時には物件を引き渡さねばならないから。

 

まさに、今の自分だな。そう思った。いつかやる。いつかできる。いつかどうにかする。温存。無限の先送り。でもそんなこと言っても、どんどんゴミが溜まるだけだ。どうしようもない。

 

断捨離的な、至極平凡なことを言っているみたいだけれど、その効果を初めて実感した。抱えていては歩けない。モノの引力。デカい穴は僕の精神性がそのまま出ていたのかもしれない。

 

明日10時にビールサーバーは撤去される。最後の生ビール。だんだん、実感が出てきた。ような。気がするだけなのかも。

 

もっと、眩しくて、締め付けられるような夏になるかと思っていた。そんなことはなく、じめじめと、ただダラダラと。劇的なことはなくて。ただ、続いていく。

 

2年と5ヶ月。まあ、長い。サーバー撤去、冷蔵庫搬出、その他諸々。たぶん、7月以降もじっとり、そこはかとなく日々は続く。でも、これからはもっと荷物を下ろす頻度をあげようと思う。

 

また、背負いたいときに背負えばよい。

(2023/7/3 3:33)

喧嘩

 父親と口論した  10年ぶりに いや、12年ぶりくらいか 高校受験以来

 

まあ、こんなもんだとは思うが、世の一人で食いちぎっている人間はすごいな やはり、ここまで徹底的に反抗するのは、なんだか疲れるし、むずい いい歳してんだから適当に流してなじんでいけよ、とも思わんでもない

 

が、自分はなんとかなると思ってやるしかない 何にもならなかったときが、こわすぎる エグい まあ、ね なんとかなるわな

 

なんとかなる

 

はあ いろいろつかれるな 

 

でも、すごく楽しい青春の日々を過ごせていて、とても嬉しい あとは駆け抜けるだけ

 

2023.6.17

Equinox

イクイノックス。

 

競馬場にはじめて行ったのは去年の10月の京都大賞典だった。経緯はくわしく覚えてないが、「人生で一度は競馬くらい行っておきたいな」って話に同期となって、なんだか5人くらいで阪急仁川駅近くの阪神競馬場に行くことになったのだった。

まあ、行ってみると楽しい。もちろん賭けのワクワクドキドキムカムカもあるんだけど、目の前を馬が走り抜ける疾走感がものすごい。そこから、競馬を見て賭けることに目覚め、毎週観るようになった。ビギナーズラックもあり運良く連勝もできた。

そして12月25日、有馬記念を迎えたわけです。

 

「イクイノックス」

単勝1番人気。オッズは2倍代。僕はいつも過去の競争データを分析して買う。イクイノックスはデータ的には鉄板の馬だった。データ的にテッパンだから、買う。いつも馬券を買うときは淡々としていて、特に馬に思い入れを持ったことなどなかった。そんなノリでイクイノックスを買おう。そう思っていた。でも、イクイノックスは違った。パドックといって、競争前に馬が楕円形のコースを歩いて周回する場所があるのだけれど、彼は、イクイノックスは、"光って"いた。本当に。天から光が差すように、光り輝いていた。顔の真ん中を太い白いラインが貫く。そこめがけて太陽がエネルギーを全部注いでいるみたいだった。引き締まった脚。トモの張り。毛艶はピカピカで、なにより「勝つ」という空気が全身から放出されていた。

この馬は絶対勝つ。イクイノックスは、勝つ。絶対に。無根拠にそう思った。そう思う自分も怖かった。そして、僕は今までの勝ち分プラス1万円をイクイノックスの単勝にブチ込んだ。10万円ぶち込もうかと本気で迷ったけど、友達に止められて、やめた。

イクイノックスは絶対勝つ。そして、レースが始まる。ゲートが開き、馬たちが一斉に走り出す。イクイノックスは馬列真ん中の外側を走る。悠々と。力を残して。まだ本気じゃない。風みたいに。スーッと。鼻血がいきなり出てくるみたいに、ツツーッ。コーナーを3つ曲がったところ。イクイノックスはするすると、前の方に出てくる。「勝った。」

そして第4コーナー。楽勝じゃん。なにこの出来レース。イクイノックスは、1人だけ違うことをしているみたいに、他のやつのことなんて何も気にかけず、ただ、あたりまえに、グングンと引き剥がし、さも当然かのように、後ろの馬たち引き剥がして進む。誰も追いつけない。ドンドン離れて、アッサリと勝ってしまった。あまりにもあっけない。余裕。楽勝。この言葉は彼のためにある。顔を貫く白いライン。イクイノックス。英語で「分点」という意味らしい。まさに、彼の顔のラインは競馬場を2つに別けた。彼が走るだけで稲妻が走る。彼と、彼以外になる。全部の主役になる。3月26日ドバイシーマクラシック。騎手クリストフ・ルメールを乗せて、イクイノックスは前に、線を引くみたいに出てくる。実際、彼の顔の真ん中には白い線が走っている。イクイノックスが走り、線が引かれ、ターフは別れてしまう。みんなイクイノックスを見ていて、彼はずっと先頭にいて、最後の直線、誰にも追い付かれることもなく、ただ、そうであることが当然であり、世界の理であるかのように、勝った。最初から先頭にいたのに、最後さらに引き剥がして、勝った。イクイノックスは1番だった。誰よりも強かった。1番強かった。

 

イクイノックスは世界を二つに分ける。イクイノックスの側には彼しかいなくて、外側は残り全部。なんだか、ダルい毎日。そこにイクイノックスがやってくる。顔の真ん中に真っ白の稲妻を携えて、駆け抜ける。周り全部蹴散らして、そもそも寄せ付けることもせずに、白い線が、自分の目の前で疾走する。イクイノックスは世界を変えるんだ。自分のいる空間も真っ二つになる。イクイノックスの走りを見る前の自分と、見たあとの自分。別れる。ダルい自分と、血が躍る自分。別れる。イクイノックスが走るだけで、何もかもが別れる。いつか彼に会いたい。会いにいく。イクイノックスに会うためだけに、競馬場に行く。

白い稲妻は僕の人生の道標になる。