③コザ、首里、那覇

前回→那覇② - 沖縄市、コザ - お前は何がしたいんだ

4日目。チェックアウトギリギリに目が覚める。外はカンカンに日が照っているけれど、結構涼しい。

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青の下で歩く。

何をしているのだろう、と思う。25歳。今は何も無い。一箇所に縛られていた頃は、外に出たくてたまらなかった。早く自由な世界へ。青々とした空の下へ。

けれど、いざ本当に自分が放り出されると、何がなんだかわからなくなってしまう。ただ端的に、明るい陽の光とは対極に、大して気分も晴れることはなく、「これからどうしていこうか?」という、どうにも解決の糸口が見つかりそうもない疑念だけが頭をもたげる。

景色はすこぶる良い。どこまでも青だ。どんなに歩いても夏だ。とにかく夏だった。

適当に、バスに乗った。高速道路の入り口にバス停があって、そのベンチの上にカバンを、どさ、と置いた。ふっと肩の力が抜ける。一瞬空気が透明になる。何も分からなくなる。自分が、景色と同じ色になっていく。

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ひたすらバスに揺られて着いたのは映画館だ。新作『インディジョーンズ』を観ようと思ったけど、開演まで二時間近くある。沖縄に来てまで映画かよ、と思うかもしれないが、旅先で敢えて映画を観るのも、中々良いものだ。とは言うものの実行に移したことなど、ない。

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気が狂いそうになる雲の下を歩いた。道はどこまで続いていく。この夏のことを思い出すと、今でも胸が詰まる。得体の知れない灰色の何かが、込み上げて、キッと鋭い音を立てて胸を締め付ける。2023年の7月は、僕の中で、たんなるひとつの塊になっている。消化されることのない、物質。

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またバスに乗って、首里に行った。あまりにも綺麗だった。感動した。それも、美味しいハンバーグを食べたときのそれではなく、寝る前にスッと水を飲んで気持ちよくなるような。

そんな空気で、ずっと宙に浮いていた。

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夜、ライブに行った。間近で会えた。普通に出口にいた。でも、話し掛けられなかった。何もかも自分がダメに思えて、そんな土俵には居ないと思ってしまった。本当にびっくりするくらい目の前だった。いつもは大きなステージの、雲の上の存在だったのに。ただ普通に、ちょこんと、立っていた。

ダメだった。こんな俺が話し掛けたりなどしていけない、みたいなめちゃくちゃめんどくさいことを考えてしまった。もっと自分に胸を張れてからじゃないといけない、とか思った。でも多分、そんなことはなくてシンプルに目を合わせてありがとうございました、くらい言えばいいものなのだ。でもやはり、そうしなかったことは紛れもない事実である。ただ、こう思う。

いつか、会って話がしたい。胸を張れたときに。

ただ、話がしたい。

 

 

それだけ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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(おわり)