ラーメンの無料券が当たった。
5年間、ひたすら引き続けて、初めてのことだった。
京都駅にあるラーメン東大のLINEクーポンが当たった。2019年から、欠かさず毎回引き続けては「ハズレ」を確認するのが日課になっていた。いつからか、ハズレだと分かっているのに引く負のルーティン、儀式と化していた。朝、目覚めるとラーメン東大から通知がやってきていて、半分寝ている状態でクジを引き、ローディング…からの「ハズレ」を確認する。不定期に到来する、僕の日常だった。その度に、チ、と軽く舌打ちして、心の中で悪態をついて再び眠りにつくまでがワンセットだった。
「当たり!」今日は違った。当たった。なんか無料券が付与されていた。うそじゃん。え?ゴメン、ハズレしかないと思ってた。マジかよ。
当たったんだが。ラーメン無料券が。5年越しに。
そして、奇しくも今日は母校のホームカミングデーに行くために、京都に行くつもりだった。こんなに完璧なタイミングってあるか?まるで神様から賜ったかのようなラーメンタダ券だ。
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京都駅は迷路みたいだと思うし、よくこんな建造物が駅として平気で使用されているなとつくづく感心する。屋外の大階段の横のエスカレーターから10階の拉麺小路へ。これ雨の日は濡れてしまうし、伊勢丹のエレベーターは混みすぎだし、そもそもマジで場所が分かりにくい。初見だと一発で辿り着けないと思う。
入口でタダ券を見せて入店。本当に入ることを許されてしまった。Raw egg free of chargeというなんともアヤしい英語を見ながら、待つ。生卵無料、て英語でどう言えばいいのか確かにわからないな。RAW EGGS FOR FREE! とかでええのかな、とか考えていると、キタ。
美味しかった。生卵は入れなかった。特に理由はないけれど、まあ、そういう風が吹いていたからだ。カゴの中に無造作に生卵が積んであるので、うっかりゆで卵だと思って割る悲劇が、恐らく1日に何度かは発生しているのではないかと思ったりする。
ラーメン無料券ごときで教訓を得るなよ、という話ではあるが、ちょいと俺は感動したのだ。もちろんうまかったのだが、5年間ずっとハズレでも、当たる日が来る。よくJ-popとかやっすいインタビューで語られがちな「諦めなければ夢は叶う!」的バイブスを、俺はラーメンから吸い取ったのだ。何事も継続、なのかもしれない。諦めなければ、いつか、タダでラーメンが食える。
そして、まあ思うのは、別にタダで食えなくたっていいのかもしれないということだ。多分、続けていくだけでよくて、その先に何が見えるのかはそのときにゆっくり考えればよい。とりあえず替玉はしておいた。150円払って店を出て、空中通路を歩く。デッカい京都タワーが見える。そういえば、京都にいたときにここへ行ったことは一度もないし、今後行くこともないように思える。もし、タダ券があれば登ったりするのだろうか?
まあ、5年後あたりに、またゆっくり考えよう。
5年というのは、意外に、早い。