歯ブラシ

 歯ブラシをくわえている。歯を磨くのは嫌いだ。めんどうだからだ。靴下を履くのもキライだ。これも、めんどうだから。めんどうなことが嫌いだ。けれど、歯はちゃんと磨く。虫歯にはなりたくないから。靴下もたまに履く。靴が臭くなるから。毎日、何かを書くと決めたけど書くことがない。日記といっても、今日は店を開けたくらいしか特筆することがない。店内での会話とか出来事はもちろんこんなところには書けないし書くつもりも一切ない。ただ起きて、開けて、メシ食って、帰って、寝る。おもしろいことを頑張って書こうとするけれど、毎日そんなにおもしろいことがあるわけでもない。

 だから、我々は平々凡々とした日常を、粛々と受け入れて生きるべき、なんていうシケた結論に至るつもりはない。毎日ギリギリで楽しく生きたい。ギリギリは、いい。ギリギリは、とてつもなく、楽しい。ギリギリは、ヤバイ。でも、わざとギリギリにしようとすると、労力がいる。ちゃらんぽらんなギリギリにも、やはりちゃらんぽらんじゃないところ、しっかりしたところはある。というよりしっかりしたところからギリギリは生まれるんだろう。まじめにぽらぽらするために、毎日歯を磨きたい。歯磨きは、止まらないから。止まったら、ほんとにおしまい。まあ、止まらないということは、やれるだろう。かろうじて、こんな夜中にも歯を磨けているのだから。これからも、もっと、なぜだか、なんとなく、なんだかギリギリで、思いもよらぬように、キマキマして、まあ結局大事なのは歯磨きだよね、チョー楽しいねって言いながら、歯を磨きたい。

 ヤバい楽しさに、毎日飢えている。だから、歯を磨く。

2021.6.16