ハイエースでマネージャーが死んだように眠っている

ハイエースの運転席で、マネージャーが死んだように眠っている。

俺はハイエースに乗っている。なぜこんな早朝にハイエースに乗っているのか。理由は不明だ。俺は今和歌山にいる。朝5時にハイエースに乗って出発した。そして今は山の中にいる。

隣で、インド人が死んだように眠っている。グーグー寝息を立てて。前と横を寝息によって包囲されている。山の中に、いる。人生はままならない。この、ままならなさに頭を抱えたくなるが、意外とどうにでもなるし、まあ全然いけると思っている。しかし、流石に2日連続朝5時に出発は厳しい。謎に和歌山にいるのももっと厳しい。眠い。頭が痛い。どうしてこうなったのだろう。

去年の7月。ハンパないワクワクが胸に詰まっていたんだけど、全部消し飛んだ。清らかさが全部黒くなっていく。淀みではない。色の変化。消えて、生成していく。俺は、本質的には飽き性であり、全ての物事に対して継続しようという気がおきなくなる。そして、一番テンションが上がるのが何かをやめるときだ。それは、新たな世界との出会いがあるから。でも、その局面、一風景だけが好きであって、それはただジャンキー、中毒者であるともいえるだろう。まあ、ずっとそのままでもいいんだろうけど、そうだと中々快適にはやっていけない世の中だ。辞めたい。何かを辞めるために、何かを始めたい。常に新しさだけを欲している。でも、その結果がハイエースだ。爆睡だ。前を向けば爆睡、隣でも爆睡だ。どデカいクレーンと、山、デカいハチ、カスみたいな直射日光、安すぎる月給、長すぎる労働時間。革命だ。俺は革命を起こしたい。しかし、窮地に追い詰められたときにこそ、人間は真価を発揮するのだろう。起きろ、真価!俺の真価!完全週休二日って聞いたけど、土曜日全部仕事!ウェエエ 

革命を起こしたい。そっと、ハイエースの中でマイナビ転職に登録する。マネージャーはまだいびきをかいている。隣のインド人は、いつの間にか横になっていて、そして寝返りを打った。俺は、ハイエースで横になるときに寝返りを打つのは大変そうだなと、素直に思った。