梅田、大量のチョコ

梅田の喫茶店に入った。喫茶店、というか、カウンターがあって、お酒も出る店。白い大理石のようなカウンター。

店先に雑にビラがたくさん貼り付けられている。懐かしい感じ。たぶん、そのしわくちゃちに吸い寄せられて入った。

中ではおじいちゃんとおばちゃんが二人。おばちゃんとカウンターの中のママが雑談をしている。内容は、「男ってよくわからない」というもの。結婚生活において家事をするとかしないとか。そんなもの。

店内。やはりやや雑。ドデン、とカウンターにトースターが置かれる。客のエリアと店のエリアが曖昧だ。最近、こういう店に来るたびに昔やっていた店のことを思い出す。もう遠い過去。たまに、ぬるっとした感触の記憶だけが蘇る。思い出、とはまた違う。

全部夢だったのかも?

ママの、美容師がやるような、へー、ですよねえ、を連発するような会話。おれもこう見られていたのだろうか。でも、居心地が良い。みんなこういう良さを感じてくれていたりしたのだろうか。角ハイと、ラムレーズンを注文。なんだかハイボールは苦く感じた。ラムレーズンは氷の上に四つ乗っかっている。ひどく甘い。そして、かなり美味しい。

途中、さらにおばちゃんが二人やってくる。慌ただしくトースターを片付けなすびをカウンターに置く。中のママ、なのか、わからない女性が冷蔵庫にさっさとぶち込み経費がどうのギネスビール四本出たけど冷やしてないだの伝票昨日の付けてないだの恐ろしく細やかな事務連絡を、店全体を多い尽くす凄い声量ではじめ、かと思えば目の前のトースターは撤去され俺の真横からパンパンのゴミ袋が出陣し中のママ、と思しき女性は「ママお疲れ様でした〜」と言って退勤し、ああ今きたこの人がママなのか、と思い直しているとそそくさと二人のおばちゃんはレシートをちょこちょこいじって経費生産をしたり開店前準備をはじめ、夢なのかと懐かしくなったが慌ただしく、午後六時半ギリギリに灰皿を整えたり机を拭いたりしていた日々を思い出し、また懐かしくなり、しかし今おれの人生はどういう位置にいるのだろう、結婚したいがさっきの会話みたいに家事手伝うか問題に全てが収斂されるのだろうか、しかしそこに穏やかな愛もありそうだしな、と思い二十分ほど注文するか迷い続けた「チョコレート」をなんとなく頼むと、小さな器山盛りにジャラーッと入った、いい意味で兎の餌のようなモリモリのチョコレートがやってして、おれはとりあえずそれをモグモグ食うのである。

(2024.1.22)