前回→https://kirimanjyaro7.hatenablog.com/entry/2022/06/17/023927
稚内駅前で目が覚める。夏といえども、北海道はやはり寒い。早朝だからなのか、霧がかかっていた。
昨夜はあまり眠れなかった。ベンチで眠れるようにはそもそも人間は設計されていないのもあるが、言いようのない不安が押し寄せてきた。一体何をしているのだろうか。Googleマップも使わず、宿にも泊まらず。7000円もするママチャリを買って、何がしたいのだろうか。もったいない。
夜中、トイレに行く。隣に駐車場があり、そこに公衆トイレがあった。家族連れ、カップルが話をしている。キャンピングカーもある。みな、家がある。家がなくとも屋根付きで、エアコンから調整された風が出るクルマで寝ることができる。そんな群れの中を歩いて、トイレに行く。不安を背負って、帰ってくる。アルミホイルに包まって、横になった。何をしているのだろうか…。ああ、寒い。
さて、今回は列車旅なのでチャリをどうにかするしかない。乗って移動するわけにもいかないし。そこらへんに捨ててしまえばいいのかもしれないが、しかしなんだかもったいない。せっかくだから誰かに使ってもらいたい。
「ジモティー」という、不用品を受け渡しできる掲示板があるのでそこに「自転車 0円」とだけ投稿しておいた。カゴに鍵を入れ、駅のホームへ行く。達者でな。
「出汁之介」というゆるキャラ(?) 説明を読んでいると不安になってくる
さらば、稚内駅。ここからは来た道を辿るようにしてひとまず南下していく。行きは特急列車だったが、帰りは各駅停車だ。ひたすら、乗るしかない。
何度も書いているように野宿列車旅のジレンマとして「乗車中に爆睡してしまうこと」が挙げられる。こちとら列車に乗ることを楽しむために切符を買い旅をしているのに、乗っている間じゅうひたすら眠りこけてしまうのはいかがなものかとは思うが、仕方がない。野宿は睡眠などではなく、断続的な気絶なのである。そして、今回も「各停の宗谷本線を楽しむぞ!」という気概で乗り込んだものの、発車の余韻も冷めやらぬうちに爆裂な睡眠を取ってしまった。
フォントがいい
この、深い緑は北海道にしかないんじゃないかと思う。心洗われると言ったりするが、本当に洗われる感じがする。最高の緑だ。
「抜海駅」名前がカッコいい。そしてここからはほぼ記憶がない。
目が覚めると名寄という駅にいた。終点だ。
天気がいい。
一番上にある稚内から、オレンジ色のマーカーで示された名寄まで、うっすら気絶していたら着いた。毎度のことながらさらにうっすらと後悔しながら、駅前をぶらつく。さて、どうしようか。
ノリで貨物列車を撮ってみるが、すぐ飽きる。何も、することがない。駅前、観光できる場所などない。
というわけで、旭山動物園に行くことにした。もうママチャリを30キロわざわざ漕ぐとかせず、シンプルに観光名所に行きたい。もう苦しいことなどしたくない。旭山動物園ってなんか有名だし。旭川行きの列車に乗り込む。気絶。到着。そしてバスに揺られること数十分…。
旭川で唯一撮った写真。睡眠不足が響いて気力がほぼ消滅していた。
着いた。旭山動物園だ。旭川動物園だと思っていたけれど、旭山動物園というらしい。そして、動物園には動物がいた。動物園で動物と触れ合った話をしても仕方がないので、ここでの話は割愛する。動物園に行って動物がいた話をすることほどつまらないことはないからだ。そんなわかりきったことを改めて言う必要が感じられない。そもそもここで話題に出す必要もあまりなかったのかもしれない。なんで動物園の話をしようと思ったのだろう。動物園には動物がいる。ただそれだけのことなのに。
水槽丸い!すごい
ペンギン。かわいい
アザラシ。かわいい
クマ。かわいい
キリン。首長くてすごかった。かわいい
カバ。まあかわいい
ダチョウ。こいつが一番かわいい
普通に楽しかったな。やっぱり動物ってかわいい。カバとかう○こ撒き散らすから注意って書いてた。あとデカいな。久々に見るキリンはマジでテンション上がる。普通に動物園楽しい。他にもいっぱい見た。やっぱ動物いいわ。ずっと動物園で見た動物の話をして老後とか過ごしたい。いいわ、動物園。最高だわ。
旭山動物園、おすすめ。
そして、動物と戯れているうちになんと稚内に残してきたママチャリの引き取り手が現れた。
人生結構可能性に溢れている。いまも元気にしているだろうか。忘れられないママチャリになったな。動物も可愛かったし。
***
再びバスに乗り、旭川駅に戻る。これまで北海道の南から北上し最北の稚内まで行き、いまはちょうど中心地点にいる。ここからどう行くかは迷うところだが、北端に行ったのだから今度は東端に行こう、という安直な発想で東へ進むことにした。またもや特急列車に乗り込む。
旭川から東へ進んだ北見という場所を目指すことにした。あまり有名な場所ではない。もう少し頑張ってさらに東の網走を目指してもよい気がするところだが、これには深い理由があった。
北見駅前。
普通にホテル取った。しかもちょい高い。
でも眠い。本当に眠すぎるねん。あと死ねほど疲れた。風呂も北海道に来てから一度も入っていない。ベットベト。あと見た目もヤバい。髪の毛テカテカ。網走とか東端とかもうどうでもいい。ひとまず近場のホテルで即寝たい。楽天トラベルを開き、ものすごく適当に取ったホテル。それがたまたま北見という場所にあったのだ。北見行くしかないだろ。
そして、チェックイン。最高の気分だった。最高すぎて一枚も写真を撮っていない。なんか横になったときに、背中が痛くない。柔らかい。もうアルミホイルを被らずにすむ。身体の周りの空気が外気温じゃない。そして道ゆく人間に風呂の場所を聞いて怪訝な顔をされることもない。なんと部屋に風呂が付いているのだ。
びっくりするくらい気持ちのいい温水に浸かり、きっちり就寝した。ホテルマジで凄すぎる。ヤバい施設だ。
最高の気分のまま目覚めるとあたりはもう暗くなっていた。アーケード街に繰り出すが、ほぼ店はやっていない。また、息が詰まりそうになる。どうやら北見はラーメンが有名らしい。
こんなにあっさりポリシーを曲げていいのかなあ。やたらと柔らかい枕に頭部を載せながら考える。
せめて、Googleマップだけは使わないでおこう。
(つづく)