オブセッション

とらわれている。思い付いた複雑な綾を形にすることに。ずっととらわれている。全部をポーズさせておきたいし、複雑なことはそのままにしておきたい。ずっとよくわからないままに。曖昧な状態で。囚われている。中間でホールドし続けることに。異様なまでのこだわりがある。

どうしても、気になってしまう。とりあえずのブラックホールだ。一旦存在するだけの宇宙だ。それを形にしたい。どうしても、表したい。

モノを作りたい。食べるんじゃなく。ただ、楽しみにして終えるのではなく。結晶にしたい。魂の傷跡だ。そうした火照り。カネコアヤノのレコードを聴いている。傷まみれになる。どうして惹かれるのか。それは、ずっと生き続けているからだ。うたをうたうことじゃない。

それは、吠え続けることだ。喋るんじゃない。吠えることだ。書くんじゃない。吠える。

一年が終わる。よくわからなかった一年を終える。気が付いたら時間が過ぎている。よくわからない。帰り道、駅に怪しい男が何人もたむろしている。立って、鋭い眼光で道ゆくひとを睨みつける。こうした人間が破滅への使者なんだろうな、と思う。日常の隣では魔物たちが口を開けてまっている。そして、それは人の形をしていないのかもしれない。

 

夜、歩く。ニケツした女子中学生がジャマ!と言いながら去っていく。ム、としかけたがなんだ、子供じゃないか、と思い直す。しかし、気付いている。そう、思い込もうとしているのだ。シンプルな話。

クソガキ、ウゼえ。

毎日思い込もうとしている。一旦ホールドしようとしている。レコード盤はクルクル回る。去年の夏以来の、レコードだ。たわんで回る。ノイズが入る。むかしだったら、すごく嫌な気持ちになっていた。けれど、まあいいか。こう、なったんだしな。

来年から、誰かと一緒に暮らす。他のもの、例えば瞬間湯沸かし器だとかはさておき、ぼくはこのガビガビとノイズが入る、大切なレコードを持っていくだろうと思う。クルクル、回る。愉快だ。

(2024/8/29)