地下鉄が苦手だ

地下鉄が苦手だ。すぐに迷ってしまう。京都市営地下鉄は何度乗り間違えたかわからない。行き先と真逆の方向に乗ってしまう。発車してからいやな予感がして、気づく。竹田に行こうとして、国際会館に向かう。

地下鉄には景色がない。地下だからあたりまえなんだが、ホームの両側に到着する電車からは個性が消えている。地下鉄以外は違う。反対方向の電車には、それに相応しい風景がある。京阪で例えば枚方市から出町柳に行くときにしか見えない家の屋根。反対に京橋に行くときにだけ出てくるコンビニの影。昼は明るく、夜は暗い。冬は寒いし、雨だと濡れてしまいそうになる。

地下鉄には何もない。だから間違える。ただただ同じ。自分の中の磁場が狂う。これまで、記憶のある限り、地上を走る電車を乗り間違えたことはほとんどないように思う。真逆の行き先に行く電車に向かってしまったことなどなおさら。でも、地下鉄はほんとうによく間違う。今日はなんと大阪メトロで二度逆方向に乗ってしまった。本当にウンザリする。味がない。去勢されつくしている。やはり都市と地下鉄の相性はよいな。この、風が吹かない感じ。

鉄道界隈でも、あまり地下鉄好きはいない気がする。いるにはいるんだろうけど、地下鉄を熱心に取る撮り鉄とか見たことがない。地下鉄の乗り鉄なんて意味不明だ。

今日は朝地下鉄を乗り間違えたせいで、JRの切符を撮り損ねてしまった。10時ちょうど発売だったのに、数分遅れてしまった。恐るべし、地下鉄。俺をJRからも遠ざけてしまう。

やはり、風が吹き景色が変わるというのはヒトにとっての喜びなのだ。そこで嗅覚も研ぎ澄まされてくる。判断ができるようになる。ただ、周りが何もかもタイルで覆われてしまうと、自分がどこにいるのかわからなくなってしまう。

やっぱり風を吹かせないとなあ。トンネルから吹く生暖かい風を感じながら、思う。もっと、地球がうごめく圧力を。平衡感覚を見失わないように。